JUNS Blog

JUNS株式会社の公式ブログです。主に開発・新製品や企業活動についてのあれこれ。

オーバークロックの基本・ソフトやPC高速化の方法

何の世界にも都市伝説やブームがあるが
やはり基本を知ることが一番大切だ

たとえばSSDが将来重要なパーツになるのは間違いないが
何枚ものSSDRAIDを組んだり
またはDRAMをハードディスクに見せて使えるようにしても
殆どのソフトやPCが現実的に速く成ることはない

確かに速いSSD8枚でRAID0を組めば1GB/秒くらいの速度にはなるし
DRAMならバスの限界までの速度でも得られるだろうが
それで速く成るのはファイルのコピー程度だ

「新しいSSDを使うとWindowsが10秒で起動した」
これは良くある都市伝説の一つ

確かに、もしかしたら最初の一回は10秒で起動するかもしれない
しかしアプリをインストールし実用的に使用を続ければ
1ヶ月程度でハードディスクの時とさほど変わらない速度に落ち着くだろう

簡単に言えばそれはWindowsやアプリがSSDを前提に設計されていないし
ストレージを速くするだけで比例して速く出来るほど
Windowsやアプリケーションは単純な構造ではない

Windowsは絶えず壊れながら、そして同時に修復しながら動作している
Windowsの中には自分用の修理工場があってパーツも一通り揃っている
電源を入れたり再起動するときは必ず自分が壊れていないかを検査し
弱くなったパーツは出来る限りパーツボックスの新品と交換する

たまにWindowsの起動が異常に遅いときがあり壊れたのかと思ったら
次からは普通の時間で起動するようになり不思議に思うことがあるが
その時はたぶんWindowsの大きな修理が行われたと思って良い

たしかにWindowsSSD上で動いていればこの検査や修理の時間は速くなるのだが
真新しく検査の必要も無かった頃と比べると
使い込み複雑にOSとソフトやドライバがもつれ合ったWindowsでは
検査や修理にかかる時間が長くなりSSDの速さが相殺されてしまうのだ


OSやアプリは設計する時点で必ず想定するハードを決めなければならない
XPならCPU-Pentium/メモリ1GB/ハードディスク80GB/VGAオンボードといったところだろうか
ネットブックの仕様が殆どこの辺りであることをみれば外れてなさそうだ

例えばネットブックを幾ら改造しても普通のノートパソコン程度までにしか速く成らないように
ネットブックというXPが生まれた頃の時代を前提として設計されたハードもたいして速く出来ない

つまりソフトもハードも基本設計(動作前提)が最も大きな高速化の障害になる

昔から使っている古いソフトを速くするのが一番難しい


ソフトには大まかに分けて何種類かある
・<1> 小さくハードに依存しないもの 
たとえばSuperPIがこのタイプ
XPが発売された頃なら5分以上かかっていた100万桁の計算は今や10秒を切ることが可能になっている
SuperPIの様に一つの計算をするだけの極端に小さな物なら速くすることは可能

しかしこのタイプのソフトはマルチコアなど新しい環境を活かすことが出来ないのでひたすらクロックを上げることが基本になる

実は超メジャーなソフトにもこのタイプは多く存在し、例えばAutoCADはCoreーi7を使ってもクロックに比例した分しか速く出来ない
クロックを上げることが難しくなってしまった今では速くすることが最も難しいタイプと言える

それこそSSDの恩恵などは全くといって良い程無い
・<2> 巨大で複雑だがあまりハードに依存しないもの
MicroSoft-Officeが代表格だろうか
途轍もなく巨大で複雑なのだが、世界中で大量に使われているので
どんな環境でも動く様あまりハードに依存しないように作られている

このタイプも<1>程ではないが極端に速くすることは難しい
ハードディスクの速度や容量はほぼ無関係
しかしCore-i7等、マルチコアでメモリの速いプラットフォームをクロックアップすれば努力分は速く成る
64bitOSでメモリを増やしてもリニアな恩恵を受けることは出来ない(32bitの時より良くはなる)
・<3> 常に新しさが求められるマルチメディア系のもの
ゲームや映像系のソフトの中で比較的高価なソフトの殆どがこれに入る

−−低価格な物にはむしろ<2>に近い物が多く存在するし
−−多くのプラグインを使用するDAW関連は独特な癖や難しさがあり1〜3のどれにもあたらない

CrysisなどFPSのビッグタイトルやAdobeCS4等のクリエイティブ系のソフトが代表的だ

このタイプはお金をかければ一定のところまでは簡単に速く成る、しかしその壁を超えて速くするには
使用するソフトの個性に合わせたパーツ配置とオーバークロックが必須になる

JUNSの作っているマシンの多くがこのタイプをターゲットにしているのですが
この分野はまさしく革命的な変化の時期にあり

ゲームならGPUの極端なマルチコア化や
それを利用したPhysXなどの現実世界のシミュレートの普及
http://ja.wikipedia.org/wiki/PhysX

クリエイティブではPhotoShopCS4で恐ろしいくらいの速度を体験できる
QuadroCXやGTX260等によるCUDA
http://ja.wikipedia.org/wiki/CUDA
そしてOpenGLの発展系となるOpenCL
http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenCL


このGPGPUの流れが今一番面白い部分です
http://ja.wikipedia.org/wiki/GPGPU

ここにならSSDや安くなってきた1.5THDDのRAIDドライブ
そしてCore-i7+3chDDR3の超高速演算と64bitOS+12GByteメモリー
これらをうまく組み合わせると面白いくらい効果が出て速く成ります
さらにオーバークロックの効果がそのまま実用的高性能につながります
5時間かかっていた仕事が1時間になるばかりか
いままでは考えられなかった表現方法が生まれる可能性があります


intelは数年後の発売を目指してCore-i7の次のCPU Larrabeeを開発中です
http://ja.wikipedia.org/wiki/Larrabee
LarrabeePS3のCELLの様に内部に10個とか100個とかのコアを内蔵する物で
CPUとGPUの垣根の無くなった正に未来的な世界を目指した物です
問題は本当のところいつ頃出せるのかと
実際どの程度のコア(性能)を持ったものを商品として売り出せるかですが
莫大な開発費とそれに見合った売り上げの見込みの必要を考えると
リーマンショックの影響は計り知れないほど大きく
それに技術的なハードルも加わり
相当伸びるか大きく妥協するかの選択をせざるを得ないでしょう

しかしCUDAはうまく離陸し始めましたし
Core i7+64bitOSによる高速化+大容量メモリ
加えてSSDやHDDの高速+大容量化
それだけで今までの100倍くらいの進化は十分可能と感じます


オーバークロックの基本・ソフトやPC高速化の方法」
の手がかりが書かれていない気もしますが

つまりは速く成るソフトとどうしても速く出来ないソフトがある
これを知っておくことが重要だと思います

「オーバクロックの基本・初歩的な話」
http://d.hatena.ne.jp/SuperPC_JUNS/20081215
オーバークロックの基本・VGA水冷化の巻」
http://d.hatena.ne.jp/SuperPC_JUNS/20081212

お時間があればこちらもご覧下さい

山中潤