JUNS Blog

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HDMI to Component コンバーター と 格安レコーダー AVT-C281J

コンバーターには不思議な魅力がある、カメラのレンズに似ていて、数千円程度の中華モノから100万近い業務用まで数え切れないほどの種類があり、組み合わせれば無限に機能が増えていくので際限なく揃えたくなる、また業務には必須のアイテムでもある。

先日1万円という格安のHDレコーダーが出てこれは欲しいと思わせたのだが入力にはアナログコンポーネントしかない、こんな時の悔しさをコンバーターは解決してくれる、たとえれば日本語以外に英語や中国語が使えればビジネスや出会いの可能性が広がるようなもので、しかも語学と違いコンバーターなら一定のお金さえ出せば直ぐに使える。と、思いきや、以外にもそう簡単にはいかないのが世の常である。そこで今回は低価格映像機器やハイビジョン動画コピーなどの用途で根強い実需をもつ HDMI から アナログコンポーネント に変換する民生用コンバータを幾つか検証してみたい。


*1万円程度の格安で販売されているHDレコーダー*

数年前までならチューナーやテレビにはD端子というアナログコンポーネントが装備されていたが、違法コピーの問題より現在販売されている機器では廃止されている。カメラでもアナログコンポーネント出力は業務用に限られつつあり、しかも専用の高価なケーブルが必要になる。実際殆どの場面でアナログコンポーネントが無くても困らないというか、わざわざデジタル信号で撮影されたものをアナログに変換すると画質が落ちるわけだから、あっても意味が無いような気さえする。
というわけで今はデジタルのHDMI全盛時代になっている。HDMIは単にデジタルで映像を送れるだけでなく様々な機能が追加されていて、最近では4Kなんていうハイビジョンの4倍の解像度にも対応したし、12bitの深い色再現や8chのサラウンド等もケーブル一本で送ることが出来るので便利この上ない様に思える。しかも付加機能としてイーサネット信号やチャンネルの切り替え信号など様々なオプションが用意されている。
これら多数の機能を実現するためにHDMIではつながった機器同士が「僕はxxという名前でこんなことやこんなことが出来るんだけど君はどう?」なんて会話を行い、両者が折り合う機能のレベルを最初に決める。しかし世の中にはHDMI端子の付いた機器といっても古いのやら安いのやら様々なものが存在し、折り合いの交渉が付かないことがある。しかも世界中にある何十万種類のHDMI機器が会話することになれば、言葉が通じなかったり、同じ単語でも解釈の違いなどが出てきてまともに動かないことも珍しくない。最近の大型液晶テレビ等は念入りに作られているのでHDMIをつないでも映らないということは少なくなったが、安い中華モノのHDMI機器では運に賭けるしかないのが現実だ。いつまでたってもアナログコンポーネントがなくならない理由にはHDMIの複雑から来る不確かさを避けて、映像信号以外入っていないアナログコンポーネントのシンプルさが好まれるという理由もある。コンバーターの王様であるスキャンコンバーターでは入力にアナログコンポーネントとRGBを使えるようにしたものが多いのもそんな理由から来る。デジタルは劣化しないというが、それは決まった規格をそのまま伝送した場合であり、1920x1080の映像を720x480に変えればデジタルでも劣化するのが当たり前なように、デジタル機器でも現実には様々な変換が行われており、殆どの場合、デジタル機器でも直列につないでいけば品質は劣化していく。逆に最近はAD/DAコンバーターの性能が極端に上がっているので、アナログコンポーネントを何回か通しても昔のコンポジットビデオのような目に見える劣化は殆どないといっても良い。

そこでデジタルとアナログの橋渡しである HDMI to Component コンバーターの民生品を幾つか揃えてみた。民生用と書いたが、HDMI to Component というのは業務用では特殊な存在で、何かの機器を騙してコンバータにする方法はあっても、専用機というのは見たことが無い。専用機で近いのはDVIからアナログコンポーネント/RGBに変換するものになるのだろうが、これも実物を見たことが無い。この分野は民生独特の世界なのかもしれない。


写真のOC-HC200は既に製造されていないが、例のHDMIの会話の一部をボタンで制御できるもので、オークション等で今も販売時より高値で取引されている。殆どのHDレコーダーは1080i用なのだが、HDMI機器同士がうまく会話できないと異なる解像度に変換されて送られてくる。他のコンバーター東芝HDMI機器をつないだところどうやっても720P以下の映像しか送られてこなかったのだが、OC-HC200のセレクトボタンを押すことで見事1080iで映像をアナログコンポーネントで受け取ることが出来た。
上記のHDレコーダーにフルハイビジョンを録画することが出来た。更にOC-HC200はHDMIの音だけをデジタルで取り出せたり、アナログコンポジットやS端子で映像を受け取ることが出来る優れものだ。発売していた頃、あと何台か買っておいても良かったかなと思わせる、いわゆる神機と呼ばれるやつだ。


HMC-601 はセレクターの機能とアナログRGB/コンポジット/S端子出力まで持たせたデラックスなものだが、OC-HC200のような解像度切り替え機能が無いので、相性の悪い相手とあたった場合には、どうすることもできない。しかし作りはしっかりしていて、実際使って相性問題で困ったことは無かった。こちらも製造中止されている。


この型番さえ書かれていないコンバーターは現在も販売されているかどうか分からない、探した限りは見当たらないが、またひょっこり現れるかもしれない。光デジタル音声とRGB出力を持つ優れものだが、特筆すべきはフロントにある「VGA/YPbPR」切り替えスイッチにある。これは通常のテレビ放送などで使われている色差規格とパソコンで使われているRGBを切り替え(変換)出来るもの。HDMIというのはパソコンにもビデオカメラにも同じ形のものが付いているが、流れている信号はデジタルであっても、パソコンはRGBでビデオカメラは色差という形式で、そのままだと互換性が無い。最近のパソコンのHDMI出力はつながれた機器がビデオ用と分かれば形式を色差に変換して出力するものも多いが、昔のものは絶望的だし、最新のものでも駄目なものも多い。そんなときこのスイッチ(色空間切り替えという)があると随分助かる。これは随分安かった気がするので、もし再販売されるようなら欲しいコンバーターだ。

現実的に今入手可能なHDMI to Componentコンバータはこの機械のみかとおもう、それも品切れがちだ。型番も書かれていないが複数のメーカーからOEM販売されている。5000円程度と安いし画質も悪くないのだが、CANONのカメラ(一部??)とつなぐと480Pでしか映像を受け取れなかったり、致命的なのはインターレスに対応していないのでHDレコーダーやスイッチャーで使う1080iが使えない。これは最近の中華モノというか安いHDMI機器に共通した問題でおそらく480P/720P/1080Pにしか対応していないHDMIレシーバーチップを使っているのが理由と思われる。インターレスに対応するとIP変換など高くついてしまうことと、最近のテレビは1080Pに対応しているから、家庭用大型テレビでコンポーネント出力しかないゲーム機をつないで遊ぶ分には問題ないし、ハイビジョンも720Pあればとりあえず困らないだろうという割り切りから来ているのだと思う。その代わり5千円程度というバーゲンプライスを実現しているから文句はいえない。しかしこれ以外の中華モノHDMI機器も同じ仕様のものが多く1080iが使えないのはビデオやスイッチャーを扱うものにとっては痛い。

ところで格安HDレコーダーの検証結果だが、廃熱設計に重大な欠陥があることが分かった。レコーダー自体が熱くなる上にハードディスクが完全に密閉されていて、大変な高熱になり、レコーダーの操作が出来なくなる。SSDならどうかと試してみたが、やはり高熱でコントロール不能になる。解決方法は簡単でUSBメモリーで使うようにすれば何の問題もおきない。画質は大型テレビで目を凝らして見ても分からないくらい鮮明。地上波と同じレベルは確保しているから使ってみる価値はある。ただしUSBメモリースティック限定であることを守り、所詮は中華モノなので万が一のことがあっても良い覚悟が必須だ。Roland V-HD40にはぴったりだと思う。