JUNS Blog

JUNS株式会社の公式ブログです。主に開発・新製品や企業活動についてのあれこれ。

PCオーディオ と 秋葉の思い出話


子供の頃、秋葉はオーディオの街だった
店頭は巨大なスピーカーユニットの競い合いで
直径が1メートルを超えるスピーカーを
無理やり壁に穴をあけてまで設置する
もう40年近くも昔のことなのでぼんやりとしているが
オーディオが最先端だった時代が存在したのは間違いない
CD-4と云う4chオーディオが発売されブームになった
リアの2chは超音波(30KHzあたり)にFM変調して通常の2chと重ねてレコードに刻む
なのでCD-4を聴くには50KHzまで読み取るカートリッジが必要で
しかもレコード針は通常のサファイアではなくダイアモンドである必要があった

おとなの日給が千円の時代に
ダイアモンド針は一万円以上もしたと思う
そのくらいの価値が
最先端のオーディオにはあったのだ

たしか解散直前のビートルズ東芝のステレオのCMに出ていた
『ステレオ』なんて言葉は今でも通用するのかな



ネットをうろうろしていたら上の写真を見つけた
ナショナルが販売していた『ゲンコツ』というスピーカーだ

僕はこのスピーカーが好きで
のこぎりとトンカチで箱を作り
下手なペイントをして
自作のスピーカーを作った

しかし一体何から出した音を聴いていたのか
だいたい誰の音楽を聴いていたのかさえ思い出せない
しかしこのスピーカーはとても良い音がしたし
なにより『ゲンコツ』の部分の奇妙さに惹かれた

当時毎月買っていたのは『ラジオの製作』と『天文ガイド
そして年に一回出る『録音のすべて』が何よりも大好きだった
創刊号はデビュー当時の浅田美代子さんがデンスケを担いでいる表紙だったか
当時でも100万円もするスチューダーやナグラにあこがれ
何度も何度も、本当に擦り切れるほど読んだ
その本の巻頭広告にあったドイツ『ノイマン』のコンデンサーマイク
21世紀の今でも最高のマイクとされバリバリ現役でいる
ハイエンドオーディオはもはや楽器の名作の様で
ストラディバリ』のバイオリンは300年を経ても最高の音を奏でるというが
ノイマン』のマイクも原型は戦前に作られたものだが
まだあと数十年は確実に最高のマイクとして使われるだろう
僕がハイエンドオーディオにあこがれる心の本質は
ストラディバリ』や『ノイマン』の様な永遠の命にあるのかもしれない

ところが現在ハイエンドと呼ばれているオーディオメーカーの多くが1980年代に生まれている
CDの登場によるオーディオ生態系の極端な変化の力によるものだろう
デジタルが『良い音』の定義を巨大隕石の落下の様に揺さぶったのだ
構造上高域を極端にイコライズするレコードは不可逆圧縮であり
非圧縮記録であるPCMデジタルに比べ遥かに劣る、つまりレコードは『音が悪い』と判決され
PCMデジタルの音を忠実に再生する戦国の下剋上時代は多くの新しいオーディオメーカーを生んだ


『可逆・非可逆』に圧縮可逆の『ロスレス』が加わりこの分野は今新しいステージにいる
iPod』の歴史的ブームの通り現在は動画圧縮のために考案されたMPEG用の不可逆音声圧縮であるMP3やAACが全盛だ
『地デジ』や『YouTube』のMPEG2/H.246等も不可逆圧縮だが『限られた帯域の有効利用』は『経済的に優れている』
『よい音』が『経済的』と云う言葉に置き換える事が可能な現代は摩訶不思議で面白い

ホーキングがタイムマシンの不可能をニュートン力学の不可逆を軸に解説していた(?)が
人類の『可逆信仰・願望』は『アンチエージング』のごとく熱烈なもので
PCでもシマンテックの『GoBack』から始まりMacが『タイムマシン』の名前の周辺機器まで発売したが
Windows7を使って先ず感じたのは『システムの復元』機能が確実に進化している事だった

面白いことにCD嫌いの『アナログマニア』達が『PCオーディオ』の登場でレコードの音を蘇らせている

意外にも『デジタル』は『真空管』と相性が良い
ノイマン』が好まれる理由に『真空管マイク』である事はは欠かせない
トランジスタ』は『真空管』を絶滅させたが『デジタル』は『真空管』を求める
デジタルが処理できない何かを『真空管』は持っている様だ

『PC』が古い音源に眠る記憶を蘇えさせるのにとても向いている事は
ビートルズのリマスターBOX』の世界的なブームで証明済みだ

かつて究極とさえ信仰されたPCMサウンドはもはや『良い音』とは呼ばれない
圧縮もしないで記録して再生するだけなのだからえらくも何ともない『ただの記録に過ぎない』というわけだ

それらはおそらく正しい見解だ

問題は『可逆圧縮』でも再現できない『正確な臨場』を作りだすことだ

まずリスニングルームやスピーカーの音響特性の補正が不可欠だ
いくら高価なオーディオシステムをおいても『正確な臨場』は決して得られない

周波数特性カーブや共振の補正を行うことが出来て
そこから初めて『良い音』への旅をスタートできる

さて『良い音』とは何だ、どうすれば手に入れられるのか

僕はそんなことに夢中になっている

複数のスピーカをデバイザーにより完全にマルチアンプで駆動する
スピーカーユニットも様々なメーカーの逸品を、また様々に組み合わせてみる

まだ旅は始まったばかりだがぼんやりと浮かんできた言葉がある

『速い音』、高速で分解度の高い、細やかな粒子をたっぷり含んだ、透明だけど情報量の多い音

オーバークロックでここ数年生きてきたが
オーディオの世界でも『速さ』は『価値』につながる

そんな確信が徐々に固まってきて
だからそんなことばかり毎日24時間考えている・・・