JUNS Blog

JUNS株式会社の公式ブログです。主に開発・新製品や企業活動についてのあれこれ。

64bit DAW / DTM / VISTAで 32bit VST VSTi PlugIn は 使えるか(異なるCUBASEとSONARのアプローチ)





今年の始め頃だったかMusicMaster(SoundDesigner)のHさんから電話があって
「64bitネイティブに対応したCUBASE5がでるのでPCを用意してほしい」
そう聞いて「やっと来たか」と心が高揚した

去年末にPhotoShopが64bitネイティブ化され
巨大な画像処理が何十倍と速くなった
正確にいえば今まではやろうとも思わなかった
何百というレイヤーを使用したレタッチも可能になるとか
7メートル四方の画像を制作できるようになるとか
とてもわかりやすい64bitの力と効能を実感できる良い例となった

ところで意外と思われるかもしれないが
DAWはレタッチ以上にメモリを使用する

それはソフトシンセの広告を見ればすぐわかる
ピアノやドラム音源の説明には必ず収録音源容量が記されていて
最近は8Gbyteは当たり前で
これは凄そうだと思わすには32Gbyteは必要というご時世だ

Moogによって発明されたシンセサイザー
先ずは正弦波にフィルターをかけて様々な音を作りだすところから始まった
スタンリー・クーブリックの時計仕掛けのオレンジ』や
世界的な人気を得た『富田勲』さんの作品でおなじみのものだ
これらは今聞いても極めて新鮮な衝撃を持っている

そして1980年代にヤマハFM音源シンセサイザーを発売する
僕が生まれて初めて買ったシンセもDX7の前のMIDIがまだ無いタイプのものだったが
そのFM音源によるサックスやストリングスのリアルさは圧倒的だった
ヤマハはチップメーカーでもあったのでFM音源LSIにして
ファミコンからパソコンなどでの電子音源を席巻し
世界中の音楽を出す商品をばらせば必ずYAMAHAのチップが見つかるという時代があった

それが1990年代に入る直前一気にPCM音源に変わった
16bitCPUが主流になり大きなメモリを安価に扱えるようになったからだ

PCM音源は楽器の音を録音して押された鍵盤に合わせて再生するというシンプルなもので
1935年にはアナログだが『リヒトゥ・トーン・オーゲル』として商品化されていた

楽器に近い音を得る最善の方法は実際の楽器を録音することだから
PCM音源いわゆるサンプリング音源が主流になることは自明の理である

しかし16bitでは扱えるメモリが64kbyteに限られるので
全ての音階をサンプリングすることはできず
たとえば88音階あるなら12音程度サンプリングしておき
音程や長押しのループや減衰などはプログラムで作り出していた

それが32bitが主流になると扱えるメモリ量が6万倍広がり4Gbyteになる
ピアノの88鍵の一鍵一鍵を押してから完全に音が消えるまでを収録する
しかも96KHz24bitで録音すれば一秒288Kbyte
もし各鍵10秒ずつ録音すれば253Mbyteになるが
メモリが3000Mbyte(3Gbyte)ある32bitパソコンでは256Mbyte程度は何とはない
しかも音は圧倒的にリアルだからすぐに主流となった

問題は楽器数が増えた場合だ
もし1楽器256Mbyteとすれば10楽器で2560Mbyteつまり2.5Gbyteになる
32bitOSで扱える最大メモリの3Gbyteのほとんどを占めてしまう
現実問題OSやDAWホストがあることを考えると音源にさけるのは1〜2Gbyteが限界だ

ところが新発売される音源はリアルさを競い30Gbyteも当たり前になりつつある
実際僕があるだけの音源をCドライブに入れたところ

このとおり675Gbyteという恐ろしい容量となった

そこでSONARCUBASEは早い段階から64bit版をテストリリースしてきた
64bitであれば128Gbyte以上の実メモリが扱えるし
既に64Gbyte程度のメモリなら数十万で搭載できるところまで安くなっている
DAWを64bitにして扱えるメモリを増やすことは切実な課題なのだ

だからプロミュージシャンから圧倒的な支持を得ているCUBASE
正式に64bit版を製品としてリリースしたと聞いて高揚した

しかしDAWの64bit化は一向に進まない
64bitどころかVistaにすることさえ嫌い
いまだに99%の人がXPを使用している

理由は「愛用しているPlugInが64bitだと動作しない」という先入観
そしてVistaに対する雰囲気としての不信感だ(XPに馴れてるからとかも)

確かにリリース当初のVistaには欠陥が多かった
しかし2年を経てとても完成されたOSになったと思っている
僕個人はXPを使うということはまずないし
64bitVistaを使っていて不自由に思うことが無い以上に
もう3Gbyteしかメモリのない32bitに戻る必要を感じない

しかしDAWを使用することは
まず問題なく音楽制作ができることが第一であって
64bit/32bitという技術に関心があるわけではない
使えない技術は必要ないのだ

なのでとにかく実験してみる事にした
64bitのSONARCUBASEにありったけの32bitPlugInをいれて動かしてみた
結果からいえばほぼ問題はない
問題のあるものは32bitでも怪しい古いものだ

以下は64bitSONAR/64bitCUBASEでPlugInを立ち上げた画面



















インストール時にOSチェックしているタイプのもの
つまり64bitということではなくVistaで使えないもはあるが
Vistaで動けば64bitでも動くと思ってよさそうな感じだ

PlugIn つまり ここでは VST VSTi について
日本語の資料が極端に少なく正確な事は言えないが
正体がdllであることは明らかだ


しかし最近はPlugInが複雑・巨大化したため
vstホルダーにはエイリアスを置いておき
実際のプログラムは別の場所にあることが多いし
中にはiZotopeのように32bitと64bit両方のプログラムを用意しているものもある

またEASTWESTのように64bitネイティブのプラグインも増えてきたし
HALionなどホストにバンドルされているPlugInも
メーカーサイトで64bitにアップグレードするパッチが供給されている場合もある




今回の実験でとても興味深いことを発見した

32bitのVSTを64bitDAWで使用する場合のCUBASESONARのアプローチの違いだ

CUBASE5 64bit に複数の32bitPlugInを使用した画面


SONAR8 64bit に複数の32bitPlugInを使用した画面



タスクマネージャーをみると
CUBASE5 はPlugInをいくつ入れてもタスクは変わらないのに
SONAR8 では32bitPlugInを入れるたびタスクが一つずつ増えてゆく

これは単純に考えればCUBASEは32bitVSTのエミュレートを自前で行っているのに対し
SONARWindows標準のWOW64を使用して32bitVSTのエミュレートを行っているということだ

SONARの32bitVSTをタスクとして切り離すという方法は若干効率が下がったとしても
ReWireの様にDAWとPlugInが別のプログラムとして動いているため(詳しくはわからないが)
もし32bitPlugInに問題が生じてもホストであるSONARや他のPlugInへの影響を抑えられる
また独立したプログラムとして動いていれば32bitPlugInであってもそれぞれ4Gbyteまでメモリを使える

丹念に調べたわけではないがAdobeCS4の場合も
64bitネイティブ化されたのはPhotoShopだけだが
32bitのままである他のアプリも64bitOSで使用すれば
AfterEffectsなら4Gbyteメモリを専有できる
同時にPremireとFlashに3Gbyteずつ割り当てれば
アプリ自体は32bitでも合計10Gbyte使え32bitOSより遥かに動作が軽快になる
32bitOSでは複数立ち上げれば一つのアプリは1Gbyte程度もメモリを使えなかったのだから
64bitOS+大容量メモリというのは必ずしも64bitネイティブでなくても恩恵を得られるということだ
SONAR8のやり方は少なくとも64bitWindowsを使うには効果が大きい
もし32bitPluInが各3Gbyteずつメモリを確保できるなら
今までと全く違う形の音楽制作が見えてくる


※SONAR6-64bitでは上限2GbyteだったBitbrige(SONAR64bitの32bitVST用プログラム)は拡張された様で※
※今回のテストでも3.5Gbyteを超え、SONAR8本体とBitbrigeを足すと4.7Gbyteのメモリを使用している※

CUBASEVSTの発明者としてMicroSoftに頼らず自前を貫いたのか
Mac版を同時にリリースしなければならないことが足かせになっているのか
それはわからないし
64bitネイティブのPlugInに関しては両方とも別タスクではなく
CUBASEと同じくホストに呑み込んでいるので
このアプローチの違い自体がいずれ過去のものになるのだろうが
現時点ではSONARに歩がありそうだ

まぁ、どちらも32bitPlugInが想像するよりちゃんと動くようなので
比べる必要もないかもしれないけれど

ちなみにProToolsも32bitとしてだが7.4からは64bitドライバーが添付され64bitVISTAで動作する
ただし8はBUGがあり8.01にUpDateが必要

MacSnowLeopardがでたがカーネルが32bitのままで
32bitAPIだったCocoaを完全64bit化させたというわかりにくいOSだ
確かにカーネルを32bitのままにしておけばデバイスドライバーなどが従来のものを使用できるので
カーネルを64bitにしたWindowsのように周辺機器のドライバを64bit用に書きなおす手間が減る
それはわかるが32bitカーネルで64bitアプリを走らせるというあたりがなんとも不自然に感じる
ただ僕が勉強不足なだけなのだろうけど

■結論■
64bit DAW は挑戦してみるだけの価値がある
心配な方は32bit&64bit両方をカバーしたVenusDualをお試しください
http://www.dawpc.jp/dual.html

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